2015年10月6日火曜日

『雪華図説』の研究 06 模写図と顕微鏡写真と比較 (第18図から第22図)

『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第十八図
第十八図
  第十八図(B)の結晶は特殊のもので、六角板の周辺に近い点に他の核が付著し、其処から他の扇形角板が発達したものである。それで此の外側にある六枚の角板(少し幅広い枝が伸び出てゐる)は一寸つつくと分離出来るのである。(A)の模写図に外側の六枚の角板が分離してゐるやうに描いてあるのは、此の種の結晶を指してゐるのではないかと思はれる。もつとも之は少し贔負の引き倒しの説かもしれない。


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第十九図
第十九図
  第十九図は羊歯状の十二花である。此の十二花の結晶も従来時々外国でも知られてゐるもので、之は六花の普通の結晶が二つ重つたものである。中央部に背の極めて低い角柱がある為に、前の三花の時とちがつて、六花が二つ共発達することが出来、十二花になつたのである。故に之は六花二つに分離することが出来る。(A)の模写図で中央にその角柱のあることを示す六角形が見られる。又一本おきの六花が一つの結晶で、他の六本が他の結晶であるから、多くの場合長短二種の枝が交互に出てゐるので、その特徴は(B)の写真でよく見られる。ところが(A)の模写図にもその特徴が判然と描かれてゐることは驚くべきことである。


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第二十図
第二十図
  第二十図は広幅の十二花の例であり、此の時は、枝の生長が遅い為に、現象が安定となり、従つて十二本の枝が全部同じ長さになり易い。同図(A)の模写図でもその点がちやんと表現されてゐる。
(※付記参照)


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第二十一図
第二十一図
  第二十一図(B)の結晶は今迄のべた結晶とその外形が著しく異つて、円みを帯びた形となつてゐる。之は落下途中地表に近くなつて気温が零度以上になつた為に、輪郭がとけたのである。此の写真は札幌で撮影したもので、十勝岳などでは此の種の形のものは見られない。内地ではこのやうにとけたものが多いので、昔から伝つてゐる雪輪風の形は之である。(A)の模写図はその輪郭のとけたところをよく示してゐると思はれる。『雪華図説』には、此の例の外にも、円みを帯びた輪郭のものが沢山揚げてあるが、本文では略することとする。


『雪華図説』の研究 模写図と顕微鏡写真と比較 第二十二図
第二十二図
  第二十二図(A)のやうな模写図が『雪華図説』中に再三見える。即ち中央に円形の模様がついてゐるものである。この円形は第十六図(A)の時のやうに、何かの構造を表象的に描いたものであるかも知れないが、実際に天然雪の中で、かういふ円い輪が結晶の中央部に見えるものがある。大抵はその線は非常に薄いので、もし之を認めて描いたのならば驚くべきことである。その一例は同図(B)に示す通りである。此の円の成因はまだ分らない。

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